花笑ふ、消え惑ふ
しかし花子、とはいささか安直過ぎやしないか。
もしかしたら流の能力への皮肉も込められているのかもしれない、と。
流が内心でひそかに落ち込んでいると、芹沢がほう…とこちらを振り返った。
「そうか花子。……気に入った」
「へ、」
「花子。儂が戻ってくるまでそこで待っておけ」
「え?」
なぜ?と困惑する流の頭を芹沢が豪快になでまわした。
もちろん能力のことも知らないからか、躊躇のない手つきだった。
「訛りがない。お主、奉公かなにかだろう。それなら京の町もまともに歩いたことはあるまい。どうだ、儂が案内してやろう」
たしかに京の町をちゃんと散策したことはなかった。
でもそれは、流にはできないこと。
だって自分はお尋ね者なのだから。
どれくらい自分の顔が割れているのかもわからないのに、京の町を歩くことなんてできなかった。