花笑ふ、消え惑ふ
総司が失笑した。
土方が顔を押さえる。
流は顔が熱くなるのを感じた。
演技が下手にもほどがある。よくもまぁこれで遊女ができていたものだ。
だけど芹沢は……不思議にもほどがあるが、なんとか騙されてくれた。
同情するような顔つきになって、
「じゃあ、ここの裏にある壬生寺で話そうではないか。それならいいだろう」
流はひとりで決めかねて土方に判断を仰いだ。
ちらりと投げかけた視線を、肩をすくめて返される。
つまり、それくらいならいいってことだろう。
「え、ええ。……わかりました」
「決まりだ。すぐに終わらせるからな、花子」
にこにこと上機嫌な芹沢の後ろで、ぼそりと土方が呟いた。
「それを決めるのはあんたじゃないけどな」
「相変わらず嫌みな男だのう、貴様は」
「はいはい。いきますよ二人とも。近藤さん、泣いちゃいますよ」
結局、芹沢がどういう人物かわからないまま。
三人は廊下の向こうへと消えていった。
「わ、……わたしはどうしたら?」
壬生寺、というお寺に先にひとりで行っていればいいのだろうか。
それともここで待っておけばいいのだろうか。
────……いや、土方さんに勝手に外に出てもいいって言われたわけじゃない。
結局、流は廊下で雑巾掛けをしながら待つことにした。