【短】千波~thousand wave~
こんな風に悩むくらいなら、さっさと告白でもなんでもしてしまえばいいんだろうけど。
今の…この心地良い関係を崩すくらいなら。
先輩が、二度とオレに対して微笑みかけなくなるくらないなら…。
深まる醜い独占欲を掻き消して。
黒く染まる感情を全て押し殺して。
ただの「いい人」で…「いい後輩」でいたかった。
そう、思いたかったのに。
現実は時に残酷でしかなく、オレの感情は自分でも持て余すくらい、育ち過ぎてしまってた。
呼び出しのこと以外、浮ついた噂なんか一つも無い先輩だけど。
きっと自分がここまで好きになる人だから…好きな人や大事に想う人がいるんだろうって。
そう考えて諦めようとするけど、オレは自分でも思っている以上に…独占欲が強いみたいで。
どんどん広がる黒いシミみたいに。
先輩が他の誰かの傍に立っているだけで…。
オレ以外の誰かに微笑み掛けているだけで…。
捻り切れそうなほど、心は汚く歪んでいった。
だから、せめて…先輩を傷つけないように。
何か酷いことをして、先輩を怖がらせないようにするために…。
距離を置くことにした。
心も、身体も。