*again
去って行こうとする優の服を掴んだ。
後ろ袖をギュッと強く。
「なんで、そんなことを言うの…?」
「………………」
「……もしかして、結婚するの?あの子と…」
結婚しちゃうから、もう会えないんだって。
そうだとしたら、
「……ううん、しないよ。彼女もいない」
諦められる気がしたのに──。
「え……いないの?」
「いないよ」
「じゃあ別れちゃったの…?」
「別れてない」
優の言っていることがよく分からなくて
脳内が混乱気味の私に
背を向けていた優が振り向いた。
「まず、付き合ってないから」
「えっ…?」
「あの日、急ぎの仕事を俺の家でやっただけ。俺のとこ、自由出勤なの知ってるでしょ?だから、会社に行くよりも俺の家の方が近いからって20分だけ一緒に仕事した。……華が想像している関係じゃないよ。」
「え、でも、あの日……」
「……さっきの子は、彼女?」って聞いたら、
優は何も言わなかったけれど、少し苦しそうに笑みを浮かべていたのだからきっとそうなんだって。
「……嘘、だったの?」
「俺は何も言ってないよ」
「そう、だけど……」
じゃあなんで、あんな顔をしたの…?
困ったように眉尻を下げる彼は
「……、……諦めてほしかったんだ」
とてもか細い声だった。