溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
私の名前も聞かれて答えると、すぐに彼は「紅葉」と嬉しそうに何度も私を呼び捨てにする。
「まぁ、そんなわけだからさ。紅葉。俺と、恋愛結婚してみない?俺、紅葉を惚れさせる自信あるよ?」
「なっ、にをっ」
「なに、照れてんの?可愛いな」
息を吐くように甘い言葉が降ってきて、わなわなと身体が震える。
「時間が無いんだろ?」
「そっ、そうですけど……でもそんなすぐに惚れるなんて……」
「俺はもう、紅葉に惚れちゃってるけど?」
「だ、だって、お互い何も知らないじゃないっ」
「そんなの、これから知っていけばいいことだろ」
そう言われてしまうと、黙るしかなくて。
「このまま、親が決めた相手と政略結婚したい?」
「そ、れは……イヤ」
「じゃあ、騙されたと思って俺と一度恋愛してみるのも、悪くないんじゃない?」
彼の話には一理ある。
どっちみち、このままじゃダメなわけだし。
何か行動を起こさなきゃいけないのは、事実。
でも、今日初めて会った人といきなり恋愛なんてっ……!
答えを出せなくて悶々としている私に、彼は口角を上げた。
「賭けてみようか?」
「な、にを?」
「──君が俺に落ちるか、落ちないか」
「……え?」
「紅葉は必ず俺に惚れる。賭けてやるよ。……だから覚悟して」
そう言って落とされたキスは、とても熱くて、蕩けそうなほどに甘くて。
顔を真っ赤にして震える私を見た彼は、面白そうに下唇をぺろりと舐める。
「あっま……やべ、癖になりそう」
その仕草がとても官能的で、見惚れてしまった私の胸は痛いほどに高鳴っていた。