溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「加賀美副社長。実は折り入って一つお願いがあるのですが」
「私に……?はい、何でしょうか」
「今日一日、紅葉さんと一緒に過ごさせていただけませんか?」
「え?」
「紅葉、ですか?」
思わずお父様と同じ顔で驚いてしまった私。
私たちの反応を見て、優吾さんはクスクスと笑う。
それが恥ずかしくて一度視線を外して咳払いをした。
「実は昨日紅葉さんと一緒に過ごした時間がとても楽しくて。もっと紅葉さんのことを知りたいと思いまして」
優吾さんの言葉に、両親は驚きを隠せない様子。
でも優吾さんにとっては想定通りの反応だったらしく、余裕さえ感じられる表情だ。
「ご家族での時間も大切でしょうし、難しければそれはそれで構いません。また日を改めて伺います」
「いえ、こちらとしては全く問題無いのですが……」
「そうですか!それでは、今日一日紅葉さんをお連れしても?」
「えぇ、構いません」
「ちょ……っと、勝手にそんな……」
嬉しそうな微笑みに水を刺すようだが声をかけてしまう。
本人の承諾を得ずにどうして勝手に話が進んでいるのか。
「紅葉いいじゃないの。元々今日はゆっくりする予定だったから特に用事も無いわ。それにこんな素敵な機会、そうそう無いわよ。明日の帰国便に遅れなければそれでいいからね」
「せっかくのお誘いだろう。行っておいで」
「お母様……お父様……」
「紅葉。そういうわけだから、君の今日一日を俺にちょうだい?」
なんだろう。堂々と外堀を埋められてしまったような感覚。
でもまぁ、確かに特別な用事は無いわけだし。
何よりも両親の目が、"絶対に断るな"と言っている。
「……わかりました」
返事をすると、優吾さんは満足そうに微笑みを浮かべながら同じように頷いた。