溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「連絡先、登録してくれた?」
「はい、しました」
「じゃあ俺に電話かけて。こっちも登録する」
言われるがままに数時間前に登録したばかりの番号を表示して、受話器のマークをタップする。
数回コール音が流れ、こちらから切ると優吾さんはすぐにスマートフォンを操作して登録していたようだった。
「明日日本帰るんだろ?」
「はい。戻ったらすぐ溜まっている仕事をしないといけないので」
「そっか、普段はOLしてるんだっけ」
「はい。総務課で働いています」
「じゃあ、その仕事が終わった後でいいから、俺に連絡して」
「……え?でも、時差とか……」
私の定時は十八時だ。
その時間、アメリカは真夜中じゃないだろうか。
「俺のことは気にしなくて良いから」
「でも……」
「良いから。連絡して」
「わ、かりました」
有無を言わさぬ言葉に私が頷けば、優吾さんは嬉しそうに笑う。
緊張はしているものの、思っていたよりも優吾さんと普通に会話できていることに私は自分で驚いていた。世間話を交えながらコーヒーを飲む時間が楽しくて、少しずつ笑い声も混じる。
しばらくそうして過ごした後。
そういえば私は何故ここに呼ばれたんだろう。
朝の一言を思い出して困惑した。
"君の今日一日を俺にちょうだい?"
ああ言われたけれど、実際にはまだ優吾さんからは何も聞いていなかった。