溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
帰国後
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「加賀美さん、来週までって頼んでた資料、申し訳ないんだが木曜までに変更できないか?」
「木曜って明後日までですか?……わかりました。なんとかしてみます」
「営業部で予定がずれ込んだらしくて、会議が早まりそうなんだ。悪いけど頼む。間に合わなさそうなら早めに言ってくれ」
「わかりました」
一ヶ月後。私はラスベガスでの夢のような一時を胸にしまいながら、日常に戻って仕事に集中していた。
入社してまだ一年ちょっと。新入社員が各部署に配属されたため私はもう新人でなくなってしまったけれど、まだまだ未熟で日々勉強の毎日。
課長から急にリスケを言い渡されて、あたふたしながら優先順位を変える。
元々納期に余裕がある案件しかまだ任されていないため、多少の変更であればすぐに対応できる。
パソコンのキーボードを叩きながら、データをまとめて資料作りに集中した。
──あれから、私は優吾さんに部屋まで送ってもらい、翌朝いろいろ聞きたそうにしている両親を軽くあしらいながら飛行機に乗り込んで帰国した。
たった数日間の渡米だったものの時差ボケになってしまうと仕事に支障をきたすため、その日はすぐに就寝。
次の日から張り切って出勤している。
その日の夜、約束通り優吾さんにメッセージを送信すると
『お疲れ。帰国したばっかりなんだから無理するなよ』
と私を気遣う返事が来た。
続けて
『今すぐ紅葉に会いたい』
と来た時は一人でベッドに顔を埋めてしまった。
それ以来毎日少しずつではあるものの連絡を取り合い今に至る。