溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
優吾さんもラスベガスを発って今度はヨーロッパにいるらしく、なかなか時間が合わないため電話はできないけれど、優吾さんからのメッセージを見ると癒されて心が温まる。
たった二日一緒に過ごしただけ。それなのにもう寂しさを感じていて、早く会いたい。
優吾さんと毎日やり取りすればするほどそう思ってしまう。
あの激動の二日間の末、私の心はすでに優吾さんでいっぱいになってしまっていた。
お付き合いをすることにはなったものの、その瞬間から超遠距離恋愛になるだなんて。
次いつ会えるのだろう。早く会いたい。
これはもう恋なのではないか。
そう思ったら、尚のこと会いたくなってしまって一人切ない日々。
両親には「小田切優吾さんとお付き合いすることになりました」とだけ報告しており、両親にとってもまさかの展開だったらしく私を心配しながらも喜んでくれた。
そんな中ランチタイムを早めに切り上げて午後の仕事に戻り、集中しているうちにあっという間に定時を過ぎる。
木曜日までには頼まれていた資料も間に合いそうで、一日分のタスクも終わったため鞄を持ってタイムカードを切る。
自社ビルのエントランスから出ようとすると、後ろから声をかけられた。
「紅葉」
「慎ちゃん」
「いい加減その呼び方やめてくれよ」
「いや今更変えられないよ」
開口一番文句を言う男。加賀美 慎一郎。二十二歳。
私の一つ年下で、今年新入社員として営業部に配属された私の従弟だ。
加賀美商事の代表取締役社長の息子であり、将来その役職を引き継ぐであろう人物。
将来のために数年おきに様々な部署を回ることになるだろう彼は、昔っから私にチクチク文句や嫌味を言ってくるから実はほんの少し苦手だったりする。
あの日、私がお祖父様のパーティーにいなかったことも会うたびに言われ続けており、もう正直お腹いっぱいだ。