溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「はよ」
「おはよう慎ちゃん。昨日はごめんね」
「……別に」
なんだか今日も不機嫌らしい慎ちゃん。
私の顔をチラチラ見ながらも信号の押しボタンを押してくれた。
信号待ちの間に通知を知らせる私のスマートフォン。
確認すると、優吾さんからメッセージが来ていた。
"今朝は無理矢理起こして悪かった。仕事が落ち着いたらまた会おう"
"紅葉、愛してるよ"
海外を飛び回っているからだろうか。甘い言葉を惜しまずに伝えてくれる。
自然と口角が上がったらしく、慎ちゃんからの視線を感じた。
「……あの男か?」
「え?」
「お前、本当にあの男と付き合ってんの?」
信号が青に変わり、再び並んで歩き出すものの慎ちゃんはずっとこちらを見ていて。
「あの男なんて言い方やめてよ」
「あの男に、遊ばれてんじゃねーのか?」
「慎ちゃん」
さすがにそれは失礼だよ。そう言おうとしたところで信号を渡り終わり、慎ちゃんは足を止めた。
「質問に答えろ」
目が鋭くなって、声が低く刺々しくなる。
強い言葉に私の声が詰まった。
「……本当に付き合ってる」
「恋愛のれの字も知らなかったお前が?」
「うん。……でも、嘘じゃない。本当に付き合ってるよ」
「……あの日ラスベガスで、一体何があった?何がお前を変えた?あの男と……一体何してた?」
尋問のような質問に、眉間に皺が寄る。
「慎ちゃんどうしたの?そんなに優吾さんのことが気に入らない?」
「質問に答えろって言ってんだろ」
責めるような言い方に、さすがにこちらも腹が立った。