溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「優吾さん、最近特に忙しいみたいですけど、ちゃんと休めてますか?」
「大丈夫。こうやって紅葉に会えただけで癒されてるから」
「もう、答えになってないし、そういうことは恥ずかしいのであんまり言わないでくださいっ」
不意打ちの言葉にお酒の効果もあって顔が火照る。
バーのマスターにおかわりをもらい、ちびちびと飲みながら優吾さんから視線を逸らす。
「本当だよ。確かに最近結構しんどい日もあったんだけど、仕事終わりに電話で紅葉の声聞いたりこうやって時間作って紅葉と会ったり。それだけでずいぶん身体が楽になるんだ」
「……そうだとしても、ちゃんと寝てくださいね?」
「わかってる。心配してくれてありがとう」
私の頭を数回撫でる優吾さんは秘書の方から呼び出されたらしく、何度も謝りながら私をタクシーに乗せて去っていった。移り変わる景色を眺めながら、もうちょっと一緒にいたかったなあと思う。
本当は今日自分の気持ちを伝えようと思ったものの、映画の話で盛り上がりすぎてタイミングを失ってしまった。
次はいつ会えるのだろう。会いたいけど、時間ができたらしっかりと休んでほしい。
そんな複雑な心境を抱えながら家に向かった。