溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
そして、一週間後。
仕事をスピーディーに終わらせた十八時過ぎ。
前回と同じ優吾さんが宿泊するホテル、E.R TOKYOを訪れた。
前回は優吾さんの後ろについていくだけだったものの、今日は一人だから少しだけ心細い。
ラグジュアリーなロビーにある広いラウンジに向かい、そこでカフェモカを注文して空いている席に腰掛ける。
優吾さんからは急いで帰るからそこで待っていてくれと言われている。
暇潰し用に持ってきた文庫本を読んで待っていると、一時間ほどで息を切らせた優吾さんが目の前に現れた。
「ごめん紅葉。大分待っただろ」
「いえ。それよりも息切れしてますけど大丈夫ですか?」
「あぁ。ちょっと道が渋滞してて走ってきたから」
「えぇっ、大丈夫でしたか?そんなに急がなくてもいいのに」
「紅葉に早く会いたかったんだ」
「ふふっ……。私も早く会いたかったです」
素直に気持ちを告げると、優吾さんは嬉しそうに笑って私の頭を撫でた。
カフェモカはとっくに無くなっていたため、そのままラウンジをあとにして優吾さんのエスコートでエレベーターに乗り込む。
二十階の奥の扉。そこの鍵を開けて中に入ると、前回と同じくリビングに通された。
「紅葉、飯まだだろ?ルームサービス頼もう」
何かおかずでも持ってくればよかっただろうか。優吾さんは慣れた手つきで電話を掛けてルームサービスを注文する。
向こうに見えるミニキッチンは全く使われた形跡が無い。
長期滞在なのだから、少しは自炊しているのかなと思っていたけれど。
もしやこの人、あまりにも仕事が忙しくて手っ取り早く全部外食かルームサービスでほとんど済ませているのではないだろうか……!?
栄養面が心配になる。
すぐに届いたルームサービスを受け取り、二人並んで食事をした。