溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「……いつもお仕事お疲れ様です」
耳元にそう囁くと、寝返りをうって仰向けになる。
初めて見た幼い寝顔。その無防備な姿と、不意に飛び出した「……く、れは」という寝言に胸がきゅんとときめいた。
私の夢でも見てくれているのだろうか。僅かに微笑んでいるようにも見える。
改めて私にしては大胆なことをしてしまったなと思いつつ、これで優吾さんの疲れが少しでも取れてくれれば。
そう思っているうちに私も段々と眠くなり。
器用にそのまま眠ってしまった。
次に目が覚めた時、私は何故かベッドに横になっていた。
「……あれ?」
少しの圧迫感があり、ぼやけた視界の中で視線を動かすと私の隣に優吾さんの姿があった。
私を抱きしめるように眠っている優吾さん。どうやら途中で起きて、寝ている私をベッドルームに運んでくれたようだ。申し訳なさすぎる。
結局優吾さんを癒すどころか手間取らせてしまった。
「優吾さん、ありがとう。……好き」
呟いて、自分で恥ずかしくなってその胸にギュッと抱きつく。ムスクの香りを肺いっぱいに吸い込むと、心の底から癒やされるのを感じた。
あぁ……癒しって、こういうことか。
「大好き」
このまま眠りたい。そう思っていた私に、上から声が掛かる。
「……紅葉、今の、もう一回言って?」
掠れた声に、バッと顔を上げる。
「ゆ、優吾さん……!?起きてたんですか!?」
「今起きた」
ぱっちり開いた目は、とても今起きたとは思えない。しかし、それ以上に優吾さんの表情が真剣で。
「紅葉、言って?」
優吾さんは起き上がったかと思うと、私の腕を引っ張ってから向かい合うようにベッドの上に座る。
薄暗い中でもわかるその激情に塗れた視線に捉えられ、私ははぐ、と息を飲み込んだ。