溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
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「……ん」
「紅葉」
「んん……?」
「紅葉、起きて」
「……ゆーご、さん?」
ちゅ、と。
完全に起きる前にキスをされて目が覚める。
「おはよ紅葉」
「おはよう、ございます」
一瞬にして目が覚めた私は、隣で甘い笑顔を振り撒く優吾さんを見て赤面する。
「ち、近いです……」
「なんで?ずっとこの距離だったじゃん」
「それは、暗かったから……。今は明るいから、恥ずかしいです」
「そんな可愛いこと言うなよ。もしかして朝から俺のこと誘ってんの?」
「なっ!?誘ってません!」
私をからかって面白がっている優吾さんに背を向けるように寝返りを打つと、今度は私の背中にぴったり寄り添うように抱きしめた。
「悪かったって。許して?」
「……別に怒ってるわけじゃありません」
「じゃあ拗ねてる?」
「子どもじゃないんですから、拗ねてもいませんっ」
「じゃあ、なに?」
「……ただ、メイク落としてないからお肌もボロボロだし、あんまり近くで見てほしくないんです」
寝起きで浮腫んでいるのもあるとは思うが、お肌がパリパリしているのがわかる。
「俺が寝ちゃったからだよね。ごめん」
「すみません、優吾さんを責めるつもりは全く無くて。私が普通に寝ちゃっただけですので」
「でも俺も起こさずにここで寝かせちゃったし」
「優吾さんは気にしないでください」
優吾さんは悪くないんだから。そう告げると少し困ったように「ありがとう」と微笑んだ。