溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「優吾は集中すると周りが見えなくなるタイプでね。今まで仕事にしか興味が無かったんだ」
「紅葉さん、優吾は本当に自分のことには無頓着なの。だから迷惑ばかりかけると思うけど、見捨てないであげてね」
「母さんも父さんもやめてくれよ。紅葉が困ってる」
「あらあら、優吾の口から人を思いやる様な言葉が出るなんて。雪でも降るんじゃないかしら」
「母さん!」
「ふふっ、冗談よ」
ダンディでとても優しそうな男性が優吾さんのお父様で、お上品で美しい笑顔が魅力的な女性が、お母様。優吾さんは見た目はお父様譲りで、その性格はお母様譲りのよう。
私にはもったいないくらいの素敵なお二人だ。
優吾さんとの親子関係を見ていると、どれだけ優吾さんが大切に育てられてきたのかがよくわかる。そこに今後は私を家族として迎えてくれるというのだから、恐れ多いものだ。
「こちらこそ、ふつつか者ですがよろしくお願いいたします」
と頭を下げて帰ってきた。
それから数週間後。
両家の顔合わせの前に、私にはしなければならないことがあった。