溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「……お祖父様、失礼いたします」
都内にあるタワーマンションの一室。ドア越しに声をかけ、ゆっくりと開ける。
ドアの向こうには数ヶ月ぶりに見るお祖父様の姿があった。
「紅葉。久しぶりだな」
「お久しぶりです。わざわざお時間をいただいてありがとうございます」
「なに、可愛い孫から大事な話があると言われたんだ、そりゃ徹夜してでも時間は作るさ」
「ありがとうございます」
お祖父様に一礼すると、私の後ろに控えていた優吾さんを見て、
「そちらの方は……はて、小田切会長のところのご子息ですかな?」と柔らかく微笑んだ。
「加賀美会長、お久しぶりです。父と弊社がいつも大変お世話になっております。小田切 優吾と申します」
「小田切社長。若いのにすごい手腕だと聞いているよ。さすが父親譲りの経営の才がある」
「とんでもございません。周りの協力があってこそです」
「人をまとめるのは難しい。君の才は確かだよ」
「身に余るお言葉です。ありがとうございます」
五分ほど、お互いの仕事について話した二人。
「……それで?紅葉。今日の話っていうのは?小田切社長に関することかね?」
お祖父様の声で優吾さんは一旦口を閉じる。
「はい」
「そうか。まぁ、まずは疲れただろう。そちらに座るといい。今お茶を用意させるから」
「あ、お構いなく」
お祖父様にソファに座るように促され並んで腰掛けると、すぐに淹れたてのハーブティーが目の前に置かれた。