溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「紅葉が昔好きだと言っていたハーブティーだ。いつ来ても飲めるように準備してあるんだ」
「嬉しいです。ありがとうございます」
「昔は毎日のように来てたのにいつからかあまり顔を見ることも減っちまったからな。もっとここに遊びに来ても良いんだぞ?」
「ふふっ、私ももうそんな子どもじゃありませんよ」
「ははっ、そうだな。子どもの成長はめでたいがなんとも寂しいものだ」
しばらく他愛無い話をし、ハーブティーが半分になった頃、意を決して口を開く。
「お祖父様」
「ん?どうした」
「今日は大切なお話があって参りました」
「おぉ、そうだったな。昔話に夢中になって忘れておったわ。それで、なにかあったのか?」
私たちをぐるっと見回したお祖父様に、一度深呼吸をする。
「私、今こちらの小田切 優吾さんと結婚を前提にお付き合いをしております」
語尾の声が少し震えた気がした。
思わず優吾さんの手をキュッと掴む。
優吾さんも握り返してくれた。
その様子を見たのか、お祖父様は驚いた顔をした後に一度息を吐き、そして今度は穏やかに笑った。
「まさか紅葉からそんな報告を受ける日が来るとは」
「私、ずっとお父様が決めた相手と結婚するのがどうしても嫌で。自分で選んだ、本当に好きな人と結婚したいと常々思ってきました」
「そうだな。そういえば昔から言ってたな」
政略結婚が嫌だったこと。
恋愛結婚をするのが夢だったこと。
でも相手がいないから、半分諦めていたこと。
そんな時に優吾さんに出会って、知れば知るほど惹かれていったこと。
それが恋に発展し、優吾さんも同じ気持ちでいてくれていること。
二十五歳になったら、優吾さんと結婚したいこと。
お祖父様に伝わるように、優吾さんと交互に一言一句丁寧に伝えた。