溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「……そうか。ついに紅葉にも、そういう相手が出来たか」
「はい。なので、お祖父様にお許しをいただこうと思って参りました」
お祖父様に反対されたらどうしよう。そう思うとどうしても怖くなってしまう。
しかし、私の不安に対してお祖父様は清々しいほどに「許すも何も、紅葉が自分で決めた相手なら間違いないよ。幸せになりなさい」とすぐに頷いてくれた。
「小田切社長。紅葉は少々意地を張りやすいところはあるが人を思いやれる優しい子です。どうか幸せにしてやってください」
優吾さんにそう言って、手を差し出した。
「ありがとうございます。必ず幸せにします」
がっちりと握手を交わした二人。
優吾さんの背中をポンと叩いたお祖父様は、すぐに今度は私を抱きしめてくれて。
「お祖父様。本当にありがとうございます」
「紅葉、誠実そうな良い人を見つけたな。これからは意地を張らずに素直に、感謝の気持ちを忘れずに過ごしなさい。それと、結婚しても私の大切な孫に変わりはないんだ。たまには遊びに来るんだよ」
「はい。ありがとうございます」
無事にお祖父様のお許しも得た私たちは、その一週間後に両家の顔合わせと結納を交わした。
お互いの両親が思いの外意気投合してしまい、式はここが良いやらドレスはどんなタイプが良いやらどうせなら白無垢も着てほしいやら、楽しそうに会話が弾んでいた。
私と優吾さんはそんな両親たちに呆れながらも、祝福してもらえることを喜び、そして感謝した。
「嬉しいですね。喜んでもらえるのって」
「そうだな。今まで両親には心配ばかりかけてきたから、ようやく親孝行できそうだよ」
「ふふっ、私もです」
そんな会話をしていると、微笑ましくこちらを見つめる両親たちと目が合ってしまって赤面する。
「可愛いわあ。こんな素敵なお嬢さん、優吾にはもったいないくらいよ」
優吾さんのお母様の言葉に優吾さんは自慢気に微笑んでおり、私の両親は恐縮しつつも娘を褒められて嬉しそう。
慌ただしく終わった顔合わせは、終始和やかなお祝いムードだった。