溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
その後もとんとん拍子で話が進み、私と優吾さんの新居も都内の一頭地に新しくできたレジデンスの最上階の部屋に決まった。
最上階とは言ってもそこまで高層の建物ではなく、駅からも近いのに閑静な住宅街で近所にスーパーなどが揃っているためとても暮らしやすそうだ。
私のためにキッチンが広い物件を選んでくれたから、私も改めて花嫁修行を頑張ろうと毎日仕事終わりにお母様に料理を教わっている。
幼い頃から料理の基本からアレンジまで様々教えてもらっていたものの、実際に作る相手を思い浮かべながらの料理は腕が上がるしとても楽しい。
できたおかずを優吾さんに持っていくと、美味い美味いと言いながらすごい勢いで食べ進めてあっという間に空っぽになるものだから、それが嬉しくてまた張り切って作ってしまう。
一緒に暮らすようになったら、毎日お弁当を作ってあげたい。
優恵に報告すると誰よりも喜んでくれて、以前一緒に行きたいと言っていた創作料理のレストランでお祝いと称してご馳走してくれた。
そんな毎日を繰り返しているうちに、気が付けば夏は終わり、金木犀の香りが秋を告げ、そして冬がやってきた。
結婚式の会場と日取りが具体的に決まり、準備が本格的に始まった頃。
「紅葉」
仕事終わりにプランナーさんとの打ち合わせのためタクシーで向かおうとした私を引き止めたのは、慎ちゃんだった。
慎ちゃんとはあれ以来、避けられていたのかあまり会うことすらなかった。
「慎ちゃん」
久しぶりに顔を見て、なんとも言えぬ気持ちになる。
仕事帰りに会ったのも大分久しぶりだ。