溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「紅葉。結婚するんだって?」
「……うん。ごめんね、直接言おうと思ってたのに、なかなか言うタイミングが無くて」
「いや、俺が避けてたからだろ。紅葉は気にしなくていい。むしろ気遣わせて悪かった」
「慎ちゃん……」
「小田切社長にも。八つ当たりして悪かった」
「……それはちゃんと本人に謝ってよ」
「そう……そうだよな。直接謝罪してくるよ」
「うん」
「紅葉」
久しぶりに聞く優しい声色に、顔を上げた。
「……結婚おめでとう。幸せになれよ」
慎ちゃんはそれだけ告げて、ぎこちない笑顔を浮かべ私の頭をするりと一回だけ撫でる。
慎ちゃんの本心がどうだったのかはわからないけれど、笑顔には笑顔を返すべきだろう。
「ありがとう。慎ちゃん」
ニコッと笑うと、慎ちゃんは安心したように笑ってその場を後にした。