溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜



「紅葉。結婚するんだって?」


「……うん。ごめんね、直接言おうと思ってたのに、なかなか言うタイミングが無くて」


「いや、俺が避けてたからだろ。紅葉は気にしなくていい。むしろ気遣わせて悪かった」


「慎ちゃん……」


「小田切社長にも。八つ当たりして悪かった」


「……それはちゃんと本人に謝ってよ」


「そう……そうだよな。直接謝罪してくるよ」


「うん」


「紅葉」



久しぶりに聞く優しい声色に、顔を上げた。



「……結婚おめでとう。幸せになれよ」



慎ちゃんはそれだけ告げて、ぎこちない笑顔を浮かべ私の頭をするりと一回だけ撫でる。


慎ちゃんの本心がどうだったのかはわからないけれど、笑顔には笑顔を返すべきだろう。



「ありがとう。慎ちゃん」



ニコッと笑うと、慎ちゃんは安心したように笑ってその場を後にした。


< 71 / 93 >

この作品をシェア

pagetop