溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
優吾side
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「……その節は、無礼な態度をとってしまい、大変申し訳ありませんでした」
「え、っと。とりあえず顔を上げてください。あの時は私が急に現れたのですから、謝るのは私の方なんですよ」
「いえ。仮にそうだとしても、私の態度は今考えても見るに耐えないものでした。不快な気持ちにさせて申し訳ございませんでした」
俺の前で頭を下げる青年。
紅葉の従弟と言ったか。
仕事中秘書から急なアポが入ったとの知らせに、忙しさから最初は断ろうと思ったものの、加賀美という名前に仕事を中断して応接室に向かった。
そこで加賀美 慎一郎さんが待っており開口一番頭を下げてきたというわけだ。
俺は訳もわからず途方に暮れていたが、話を聞くに初めて会った日のことを詫びに来たらしい。
正直あの日は紅葉に会えたことが嬉しすぎて、彼のこともほとんど印象に残っていなかった俺は
「本当に気にしてませんから。どうか顔を上げてください」
と逆に少し困ってしまう。
とは言え紅葉の身内だ。紅葉との結婚が決まった今、これから慎一郎さんとも長いお付き合いになるため無碍にすることもできない。
どうにか頭を上げてもらい、少し話をすることにした。