溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「紅葉とは、私が生まれた時からずっと一緒に育ってきました。五個上に姉がいるのですが、二人で姉の周りをよくうろついて遊んでいました」
紅葉の昔話を聞けるのは嬉しくて、興味深い。
「物心ついた時にはもう、隣に紅葉がいるのが当たり前だったんです」
「従弟であり、幼馴染のようなものだったのですね」
「はい。……もうお気付きかと思いますが、私はその頃からずっと紅葉を特別な存在として見ておりました」
なんとなくそんな気はしていたため、大して驚かなかった。
「しかし自分の気持ちの変化について行けず、何も変わらず笑いかけてくれる紅葉にいらいらが募ってしまい、その頃から紅葉には酷く当たってしまったり嫌味を言ってしまったり。子ども心に恥ずかしかったんでしょうね。好きな子をいじめたくなる、のような」
「はい、思春期によくありますね」
「はい。でも私は、思春期を過ぎてもその態度を改めることができず何度も紅葉を傷つけてしまっていました」
だから嫌われているのはわかっているんです。
そう言った慎一郎さんは、自分の言葉に改めて深く傷付いたように唇を噛み締めていた。
とても後悔しているのだろう。素直になれなかったことを、心から恥じているのだろう。