溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「貴方がもっと良い男になる頃には、私も今以上に良い男になって紅葉を愛し続けていますよ」
それは、自分自身に対する暗示のようなものだ。
「でしょうね。そうであってほしいです。……いや、そうでないと困ります。……それに私も、今度こそ自分の気持ちに正直に、紅葉に負けないくらいの良い女を捕まえてみせます」
慎一郎さんは何かを決意した表情で、
「本日は突然の訪問にも関わらずお時間をいただき、誠にありがとうございました」
と深々と一例してから応接室を出て行った。
社長室に戻った後、紅葉にメッセージを送信する。
"紅葉、愛してるよ"
唐突な愛の言葉に、数分して既読の表示が出る。
きっと画面の向こうで、恥ずかしがり屋な紅葉は今頃顔を真っ赤に染め上げているだろう。
どんな返事が来るだろうか。
からかわないで……何言ってるんですか……恥ずかしいからやめて……。
様々なパターンを想像していた俺に届いた返事は、
"私も、愛してます"
不意打ちで心臓を射抜かれた気がして、思わず胸を押さえる。