溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
これはずるい。滅多にそんな返事しないのに。
これを送ったであろう紅葉の顔が今すぐ見たい。
きっとたまらなく可愛くて、見たら俺はもう腕の中から出すことができなくなりそうだけど。
小さく笑っていると、ドアの向こうからノックの音が聞こえて「どうぞ」と答える。
秘書が入ってきて、スマートフォンを閉じた。
「失礼いたします。社長、午後のスケジュールですが……社長?どうかしました?」
「ん?なんだ?」
「いえ、お疲れでしょうに急に表情が明るくなったようですので。何かいいことでもあったかと」
「あぁ……まぁな。最高にいいことがあったよ」
スマートフォンをちらつかせると、納得したように笑顔で頷いた秘書。
「それは良かったです。では午後のスケジュールですが──」
そうだ。仕事終わりに紅葉を食事に誘おう。
そのためには仕事をとっとと終わらせないと。
その日の業務は、いつも以上に捗った。