溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜



「ただいま」


「優吾さんっ、おかえりなさい!」


「ただいま紅葉。良い匂いだな」


「もう少しでできるので、着替えて待っててください」


「わかった。楽しみにしてるよ」



優吾さんが着替えている間にお皿を出して盛り付けて食卓に並べる。


シャンパンクーラーに入れておいたボトルの温度を確かめて、グラスも用意する。


タイミング良く優吾さんが部屋着で戻ってきて、



「うわ、すご。ごちそうじゃん」



嬉しそうに目を輝かせて椅子に腰掛けた。


私も向かいに座り、シャンパンをグラスに注ぐ。



「俺ビーフシチュー好きなんだよ。嬉しい」


「良かったです。急いで作ったから味に自信は無いんですけど……」


「匂いでわかるよ、うまいから大丈夫」



優吾さんは待ちきれないとばかりに、グラスを手に持つ。



「優吾さん、お誕生日おめでとうございます」


「ありがとう、紅葉」



そっと合わせたグラス。


あまり自信の無かった料理も、優吾さんは何度もおいしいと言って食べてくれた。



「優吾さん」


「ん?」


「これ。ささやかな物ですが」


「プレゼント?くれるの?」


「はい。喜んでくださるかはわかりませんが」


「ありがとう。開けていい?」


「はい」



食後にソファに座った後、プレゼントを渡す。


その箱の包装を丁寧に取ると、蓋を開けて嬉しそうに中身を取り出した。



「おぉ、シンプルでいいね。俺の好きなデザインだ」



世界最高峰と呼ばれるスーツやそれに関連する商品を展開するブランド。


そのブランドの新作ネクタイだ。



「早速明日から毎日使わせてもらうよ」



ブルーにシルバーとゴールドのストライプがとても上品で、シルク素材がとても滑らかなものだ。


優吾さんのいつも着ている高級なスーツにも合うものを、と思って選んだけれど、嬉しそうに自分で首元に持って行った優吾さんを見ていると、これにして良かったと思える。


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