溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「嬉しいよ、ありがとう紅葉」
抱き寄せられた身体に顔を寄せると、私の頭を優しく撫でてくれる。
「あ、あともう一つあるんです」
「もう一つ?」
身体を離して、キッチンの食器棚の中から箱を取り出す。
「これ」
「ペアの……バカラグラス?」
「今シャンパングラスしかないから。一緒にお家でもいろんなお酒飲めたらなって。それに、私たちが出会ったのはバカラのテーブルだから、それにもちょっと掛けてみて。……ダメですかね?」
恥ずかしくなって箱で顔を隠す。その影から優吾さんを覗いて見てみると、そっと箱を取られて腕を引かれる。
「最高じゃん」
キツく抱きしめられて、少し息苦しい。
でも。
「こんな幸せな誕生日は初めてかも」
「今までだってお祝いしてもらってたんじゃ?」
「好きな人に祝ってもらうのは格別だろ」
「ふふっ……喜んでくれて嬉しい」
そんな風に言ってもらったら、私ももっとくっつきたくなって。
その日はあれこれ語りながら、バカラグラスで様々なお酒を楽しんだ。