溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜
「……あ」
「どう?久しぶりだろ?」
「はい。……一緒に外から見るのは初めてですね」
「そうだな。もっと近くに行こう」
そこは、ベラージオ前で行われている噴水ショー。
いつのまにか大通りまで来ていたようだ。
水が噴き上がるたびに歓声が上がるのを、二人で静かに眺める。
周りは熱気に包まれているのに、私たちの周りだけ二人きりの世界のような気がした。
「……綺麗」
「そうだな」
幻想的にライトアップされたショーを見ていると、込み上げてくるものがある。
「紅葉?」
「優吾さん。……私を見つけてくれて、結婚してくれて、ありがとう」
ショーを見つめたまま繋いだ手をぎゅっと握ると、隣から視線を感じた。
「……俺も。紅葉、俺と出会ってくれて、結婚してくれて、ありがとう」
その日、私たちは飽きることもなく、何度も何度もショーを見続けた。
きっとここに来るたびに、この光景を見るたびに、私は優吾さんと出会った日、そして結婚式を思い出すことだろう。
「愛してるよ、紅葉」
「私も愛してます。……幸せすぎて、どうしよう」
「幸せすぎる、か。でもこんなもんで満足されちゃ困るな」
「……え?」
隣を見上げると同時に頰に伸びる手。
それに息を呑むと、優吾さんはふわりと微笑んだ。
「言ったろ?一生かけて幸せにするって」
その妖艶な笑みに、私は何度でも魅了されて翻弄される。
「まだまだこんなもんじゃないから。覚悟してて」
降り注いだ甘いキスの向こうで、まるで私たちを祝福するかのように噴水の水が高く舞い上がった。
end.