夜が明けぬなら、いっそ。
「そんなに困っているなら私が町から代わりを探して来てやる。
それか、本当にその醜女とやらと夫婦になるのも1つの手だと思うが」
「違う、俺がお前に受け持って欲しいんだよ」
「…断る」
何故だ、と。
理由を聞いてしまいそうになった。
けれどそれは私がしてはいけないこと。
「触られるのも気持ち悪いくらい嫌な女とわざわざ夫婦のふりをしたいとは、お前も中々歪んでいるな」
「…本当にそう思っていたら、嘘ついてまでも君を抱き締めたのはおかしいと思わないかな」
「そうだ、お前はおかしいんだ。……いいから離せ」
「ほら今だってそうだ。俺はお前を抱き締めて触ってる。…頼む、分かってくれ小雪」
なにをだ、なにを分かればいいんだ。
こんな醜態を私に晒させておいて良く言えたものだ。
「しつこい、くどい、…離せと言っている…っ」
「……小雪、」
なんて哀れなんだ。
自分を好いてくれたと思っていた同い歳の男には人斬りと怯えられ、信じていた父さんには人身売買として育てられていた真実を知り。
この同じ人斬りにすら触ることを拒まれた。
そんな私は近い未来、労咳で死ぬ。