夜が明けぬなら、いっそ。
「もし私がここでお前を殺したら…どうなる、」
「君はもう刀を持たなくて良くなるね。やっと普通の女の子として生きさせてやれる」
「…そんなの、…酷だ」
「…どうして?」
気が引けるように言葉に詰まった。
私はこいつからの「どうして」という言葉が嫌いだ、大嫌いだ。
らしくなく震え続ける刃。
それを見透かしてくるような目。
「…なにを迷っているんだい小雪。敵が目の前に居るだろう?
…躊躇うな、お前なら殺れるよ」
やっぱりこいつはズルい。
ここでその名前を呼んでくるなんて、狙っているとしか思えない。
「っ、」
一瞬、ほんの一瞬に、幻のような夢を見てしまったのだ。
私が仇なんて考えなくなって、全てを許して許されたとき、その先でもし女としての生が許されるのなら。
そのときは───…こいつと一緒に今のような暮らしを望めたならば。
私はきっと心からの笑顔で笑っているんじゃないかって。
あぁ、なんて。
なんて……馬鹿な人なんだろう。
「っ、わかった…」
「そうだ、それでいい」
「っ…、うぁぁああぁあ───ゴホッ…!!!はっ…!ガハッ…!」
「小雪……っ!!」