夜が明けぬなら、いっそ。
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『先生、こゆ……トキちゃんにはもう会えないのですか?』
『あの子は戸ノ内に任せてある。そんなこと言ってる暇があるなら、新たな暗殺作法でも覚えろ景秀』
『……はい』
少年は毎日のように聞いていた。
あの子はどこに住んでいるのだろう?
あの子はまた城に来てくれるのだろうか。
9つだった少年は10歳になり、そして12歳になった頃。
『久しぶりだな、戸ノ内』
戸ノ内 彦五郎と唯一深い繋がりのある家臣の声に、少年は咄嗟に足をピタリと止めた。
暗殺者として心得て生活する上で初めて感謝したかもしれない。
こうして見破られずに聞き耳を立てられること、忍のように気配を消せること。
『先生もお元気そうで』
『ところで、お前のところの娘はどうだ?確か…十を殺す鬼で十鬼、だったか』
ちがうよ、小雪だよ。
少年は心の中で反論しながらも息を殺した。
『それが、私のことを本当の父親だと思って何よりも慕ってくれるんです。これは上手く使えますぞ、先生』
『…ほう。腕の方はどうだ?』