夜が明けぬなら、いっそ。
「ぜひとも4人目の妻にしたい」
「ちょっと茂くん??とりあえずもう少し天ぷらに浸ろうよ、色々と早すぎるから」
「あの娘の名はなんだ。聞いてこよう」
「ちょっ!まずは作戦会議が必要なんだよ、庶民には!!」
景秀に続いて、思わず私もぐいっと押さえるように手を掴んでしまった。
だってこの男には和宮姫(かずのみやひめ)という若い嫁が居たはずだ。
確かに一夫多妻制とは耳にしていたが、どこか違うんじゃないかと家茂公からは誠実なものを感じていたから。
だがそれは気のせいで勘違いだったらしい。やはり男は所詮は男だ。
「茂くん、いいかい茂くん。君は今、ただの茂くんなんだよ。いきなり嫁になれって言われても女の子は引いてしまうね」
続けるように「そうだろう小雪」と問われ、とりあえずコクコク頷いておく。
それでもやはり征夷大将軍として育った青年には難しい話らしい。
きょとんと目を丸くさせて「なぜだ?」なんて言ってくる。
「…わかった。とりあえず俺が声をかけて連れてくるから、普通に友達からの会話で進めてくれよ?」
「承知だ」
「それと怖がらせないようにね。茂くん、ちょっと顔怖いから」