夜が明けぬなら、いっそ。
そうなのか?と、上様はなぜか隣に座る私に聞いてきた。
「小雪、僕は怖いか?」
「……」
確かに景秀が持つ天性の愛嬌と比べると、どこか恐怖がある見た目だとは思う。
私はそういう男の顔には慣れていたからそこまで違和感はないけれど、ああやって天ぷらを配膳している町娘からすれば……。
「……はい、少し」
「…うむ、気を付ける」
「あとその堅苦しい喋り方も…なんていうか、あいつになればいいんです」
口調をどうこう言える立場ではないが、私はまっすぐそいつを指差した。
既に娘の隣に立って、何やら楽しげに会話をしている。
おい、お前が楽しんでどうする。
ちょっとだけ上様がお怒りになってるぞ、さっさとしろ馬鹿野郎。
「あぁこっちこっち、どうしても君に紹介したい人がいてね」
「は、はい…」
そんな私の視線に気づいたのか、話を続けながらも私達の元へ娘を連れて歩いてくる。
そんな娘の目は既に景秀へ釘付けだ。