夜が明けぬなら、いっそ。




「……景秀よ、」



ぶわっと背筋が凍った。


そりゃそうだ、怒ってるに決まってる。

あの娘と一言も交えずに彼の恋は終わってしまったんだから。

いいや違う。
誰かさんに終わらせられたのだ。



「あ、悪いね茂くん。でもやっぱり和宮姫が君には一番似合ってると思うんだよ俺」


「………貴様、」



おい、ちょっと待て。

これから狂言に行くんだろう。

ここで暴れられたら強制退場させられるに違いない。


それに上様にこんな失態を浴びせたなんて、やっぱりこいつは確実に罰せられても文句は言えない。



「───ふっ、」


「えっ」


「ふっ、あっはっはっ!!!余は振られたのか!初めてだ!お前に女を奪われたとは!!」



せめて“僕”って言って欲しいんだが…。

もう彼も隠す気が無いんじゃないかと思ってくる。



「さぁ狂言へ行こう!こんなに楽しい日は初めてだ!なにボサッとしてるんだ小雪!置いてくぞ!」


「……はい」



なんか……疲れた。

余計な気を回しすぎたのか、景秀が軽く扱う理由も少し分かったような気がする。



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