夜が明けぬなら、いっそ。
お尻に桃燈でも付けているんじゃないかと思うほど、ほわっ、ほわっと川縁を照らしてくれる小さな光。
見ているだけで気分が落ち着く不思議な感覚だった。
「小雪は初めて?」
「あぁ、本当にいるんだな…光ってる、すごいな」
「うん、綺麗だね」
夢中になって目で追いかけた。
すると1匹がスーーっと近づいてきて、私の周りをふわりと飛んでいる。
「小雪、手で空洞を作ってあげるんだ」
「…どうやって、そんなのしたら潰してしまう」
「平気さ、俺も手伝おう」
そっと私の両手を包み込むように、2人で蛍の住み処のようなものを作った。
そこに誘き寄せられるようにして1匹が優しく入ってくる。
「そのままゆっくり閉じて、」
「わ、……ふふっ、すごいな、ここで光ってるぞ」
「ね、この子は小雪の優しくて温かい手に安心したんだ」
ちがう、私だけじゃ無理だった。
私だけだと下手したらすぐに潰して殺してしまっていたかもしれない。
だけど、大丈夫だよって言いながら同じように包んでくれるもう1人がいたから。
その安心が私に伝って蛍に伝って、そしてひとつになったんだ。