夜が明けぬなら、いっそ。
「…あははっ、かわいいな、こいつ」
「お前の方がかわいいよ」
「……」
そういうことを求めてるんじゃない。
またふざけたこと言いやがって…と、視線を移してしまったのが馬鹿だった。
それはもう愛しげに、慈しみに溢れた目。
暗闇の中でもはっきりと分かってしまう目だった。
「…小雪、お前はこうやって小さな命を守ることが出来る」
「…それは…お前がいるからだ」
「また嬉しいことを言ってくれるね。困るな、そういうのは」
困るって、なんだ。
迷惑か?それとも面倒か?
私のそんな不安は、ふわっと近寄った男の優しい温もりに消えた。
「…口付け、したいんだけれど俺」
「……何とだ。蛍とか」
「小雪、それって素なの?それともわざとなのかい」
居たたまれなくなって、ふいっと顔を逸らしてしまうと。
そんな衝動にびっくりさせてしまったのか蛍は川へ飛んで行ってしまった。
「あ……、」
「…ほら、蛍も空気を読んでくれたんだ」
「違うだろ。お前が変なことを言うから逃げていったんだ」