夜が明けぬなら、いっそ。
なにを都合の言いように解釈してるんだ、こいつ。
少し残念に思いつつも景秀の顔が見れないからどうしたらいいか迷う。
顔は背けたまま。
川の音とせせらぎに耳をすませて、ただしゃがむように座っていた。
「…お前は、好きでもない女と……接吻が出来るのか」
「俺は潔癖症だ。出来るわけがない」
「なら、どうして……」
私なんかとするんだ───…とは、やっぱり言えないまま。
こんなにも血を浴びてるどころか、自分からも血を吹き出すような女だ。
そんな女と接吻がしたいだなんて、お前はそこまで女に困っていないはずだろう。
「ゴホッ、ゴホッ、……少し、離れてくれ」
「…俺に移せって言っただろう」
「そんなのするくらいなら…それ前に私がお前を殺してやる、」
労咳で布団の上で大人しく死んでいくなんて、この男には似合わない。
そんな言葉がどうにも私らしい返事だったのだろう。
景秀は柔らかく笑った。
「あっ、」
腕を引かれることはたくさんあった。
だけど今は、本当に軽く掴まれただけで身体はよろけてしまう。