夜が明けぬなら、いっそ。
「わっ、や…、」
「……それはいけない。もっと聞きたくなるんだよ」
「ならやめろ…っ、ぁ、」
はらっと襦袢が肩から落ちた。
露になった首筋から鎖骨、ゴクリと目の前の喉仏が動く。
月夜に照らされて、そいつの歯は牙が見えたような気もして。
本当に食べられてしまう…なんて。
「…細い、どうして、……なんでこんなに細いんだよ」
「…雪、みたいだろ、」
私のそんな一言に、首筋に埋めていた顔が勢いよく上がった。
震える目、今にも泣きそうな顔。
そしてまた堪らなくなったのか、強く強く引き寄せられる。
「…なら、消えてしまうね小雪は」
「あぁ。でも…夜が明けなければ消えない。雪は温かいと溶けてしまうからな」
「だったら明けるな、ずっと夜でいい」
命は、雪。
私の命は、きっと雪なのだ。
「景秀、」
「…なに?」
「女としての幸せって…なんだ」
いつからか知りたくなった。
お前はいつも女として生きていい、普通に生きていい、なんて言ってくれる。
だからこれくらいは聞いても許されるはずだ。