夜が明けぬなら、いっそ。




「…私は、それが分からない」


「……それが俺も、よく分かってないんだ」



なんだ、それじゃあ意味がない質問だった。


だけどこうして誰かと同じ景色を見て、私より悲しんでくれる人が隣にいて。

いつか女として生きれたら、こんな男の傍にいたいと思わせられて。


一瞬でも、そんな夢を見て。

少しでもあたたかな気持ちになったとしたら。



「───…私はもう既に、女として幸せなのかもしれないな」



無上の幸せ、無上の幸福。

これ以上のものは存在するのかとさえ考えてしまう。



「……小雪、俺はお前に斬られるかもしれない」


「…どういう意味だ」


「いま俺が思ったこと、正直に言ってもいいか」


「…なんだ」



斬られてもいいから、それでも言わせてくれ───男からそんな気持ちが伝わってくる。


ぎゅうっと、細くなった身体を溶かさぬように抱き締めてくる。

けれどそれ自体が、私からすれば温かすぎて幸せすぎて溶けてしまうというのに。



「───…お前を抱かせてくれないか」


「……」


「え、聞こえてる?あれ?聞こえてる?」


「……」



小雪ちゃん?なんて、耳元で甘く囁いてくる。



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