夜が明けぬなら、いっそ。
別離の八
「標的はあの3人で間違いないね」
「あぁ、お前は先回りして構えていろ」
「駄目。そうなると小雪1人に護衛させることになる」
ナメてもらったら困る。
いいや、これは当たり前の心配をしているんだよ───。
そんな言い合いなどしている暇はない。
目の前を歩く護衛的である若い町娘、それを先の店から狙う不逞の輩3人。
「ゴホッ、ケホッ」
「小雪、俺の言うことを聞いて」
「…確実に仕留める為だ。逆に私の言うことを聞いてくれ」
様子を盗み見る暗い路地裏。
こうなったら最終手段だと、私は景秀の袖をきゅっと掴んで見上げた。
「お願いだ、けいしゅ」
「……」
……足りぬか。
こうなったら、少し背伸びをして首に腕を巻いてみる。
「…こんなこと、俺は教えていないよ」
「花街で見て盗んだ」
「……まったく余計なことをしてくれるね。連れて行ったのは誰だよ、そうだ俺だよ」
情けない自問自答。
それでも男は私の背中に腕を回して受け入れてくれる。
ちゅっと、今度は油断していた私に弾けるような唇が合わさった。