夜が明けぬなら、いっそ。
「っ、これはしていいと言ってないだろ、」
「絶対に無理はしないこと、いいね?なにかあったら任務を放り出して逃げたっていい」
誘ってきたのは小雪だよ───、
景秀は言いながらも、先回りするために路地裏を颯爽と抜けていった。
今回の仕事は若い町娘を狙って襲う、外道な集団が息潜めているとのこと。
巷では我狼番衆(がろうばんしゅう)と呼ばれているらしく、その名のとおりゴミ屑集団である。
「ようよう姉ちゃん、ちょーっと道を聞きたいんだけどさーあ?」
「わ、私ですか…?」
「俺達、最近江戸に来たばかりで全然分かってなくて困ってんだ」
「そうなんですか…!私で良ければご案内しますよ」
なるほど。
か弱そうな町娘を標的にし、それはもう分かりやすい戦法で来るらしい。
ただ、強面な男に囲まれてしまえば娘は受ける以外の返事が出来なくなる。
それも奴等の下手なやり方だろう。
「悪い、遅れた。待たせてごめん」
「えっ」
「途中で知り合いと長話してしまったんだ。千代、今日はいつもと違う着物なのか」
様子を見計らって集団の中に割って入った。