夜が明けぬなら、いっそ。




「ふっ、」



と、男の1人の笑い声だけが気になった。


今ここで斬るべきか。

それとも、もう少し進んだ先にまだ仲間がいるかもしれない。



「優しいねェ、姉ちゃん」


「っ!!」



ガキィィイン!!!

女と見破られていた返事を聞いてすぐに抜刀、しかしギリギリで止められた。



「おっと危ねェ、こんな物騒な女がいるなんて江戸は怖ェなァ」


「…それは私の台詞だ。女を襲って何がしたいんだ。あぁ、花街に行く金すら無いんだろうな」


「うるせェ!!おい!お前ら!!」



パチンと指を鳴らした合図。

ぞろぞろと木陰から男達の集団が出て来た。



「…どういうことだ」


「はははっ!お前らのことなんか最初から知ってたんだ万屋さんよォ。だから向こうには誰も居ねェ」



逆に嵌められたということか。

となると、今頃景秀は私を探して走り回っているのかもしれない。

そんなものを考えたら、なぜか笑みがこぼれてしまった。



「お前が女なら丁度いい。どれ、…よく見るとさっきの女より可愛い顔してんじゃねェか───……え?」



ザシュッ……!!

ブシャッ!!と、血しぶきが飛び散った。



< 167 / 210 >

この作品をシェア

pagetop