夜が明けぬなら、いっそ。




私を触っていた指が5本、パラパラと散らばって落ちる。

戸惑う男は痛みさえ追い付いていないらしい。



「っ、ギャァァアアアアアア!!!」


「…黙れ、うるさい」



スパン───ッ!!


瞬時に叫び声は止まった。

ゴロンッと転がる生首を前に、仲間達はざわめきと悲鳴、笑う者まで様々だ。



「次は誰だ。さっさと来い」



久しぶりの感覚だ。

ずっと人を殺して来なかった、あいつと出会ってからは。

簪を探したり狂言を見たり猫を探したり、そんな平和なものばかりだったから。


けれど、やはりこれが本業なのだと。



「はっ、こいつァ面白れェ。益々手にしたくなった」


「お前が我狼番衆の司令塔か」


「どうだかな。まさかお前が少し前に噂があった、世界平和を望む人斬りか?」


「生憎だが違う。私はあんなふうに呑気な阿保ではない」



あんな奴と一緒にしてくれるな。

私は自分が殺した死体に合掌だなんて狂ったことはしない。


そんな男は、1人しか知らなかった。

そう───…昔から1人だけ。



「ひぃぃいいいいい!!!」


「なんだこの女…ッ、鬼だ…!!」



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