夜が明けぬなら、いっそ。
「……亡くなったよ、」
トサッ。
手にしていた風呂敷が地面に落ちた。
「7日前ばかしだったか、…こんな雪の日にな、1人で息を引き取ったんじゃ」
少女に渡されなかった分せめてもと言うように、その風呂敷の結び目はほどけて。
中から覗く撫子色の着物、水仙が描かれた帯。
少女のぎこちなくも照れくさそうな笑顔が、俺の脳内を占領して広がった。
「冬まで生きたいと、ずっと襖の外を眺めていたよ」
覚悟はしていた。
そりゃあ俺と別れたときですら、いつ消えてしまうか不安になるくらい細かったんだから。
けれど小雪は死なないんじゃないかって。
こうしてひょうきんに現れた俺を見て、開口一番「…誰だ」なんて生意気に言ってくるだろうって。
俺は、そんな情けない思いに賭けたのだ。
「水仙の花言葉は何かと、会う度に聞いてきた」
それはね、知っていたけれど教えたくなかったんだ。
その花が好きだと言った儚い君の微笑みが悲しく見えたから。
そこに余計追加させなくてもいいだろうって、なにより言葉にしたら本当になってしまうんじゃないかって。