夜が明けぬなら、いっそ。
すごく不器用で、ぶっきらぼう。
女の子だというのに生意気で俺より勇ましいところがあって。
どんな教育をされたらそうなるんだって思ってしまうくらいでね。
「…惚れていたんです、惚れていたんですよ俺。そんな女の子が……すごく好きでした」
伝えることなんか出来なかった。
きっと、それは俺も小雪も。
それは優しすぎたからお互いの幸せを願ってしまうような、そんなすれ違い。
それだけだったらまだ救いはあったかもしれないけれど。
でも君はきっと、それすらも自惚れるなと笑ってくれるんだろう。
「誰よりも…かわいい、女の子でした」
自信は誰よりも無かった。
強く取り繕っていないと、今にも消えてしまいそうな女の子で。
なぁ小雪。
最後に少しだけ俺の身勝手な想いを吐き出しても許されるならね。
「出来るならお前を……幸せにしてやりたかったよ、」
もっと笑って泣いて、そんなありふれた毎日を一緒に過ごしたかった。
着物を渡したのだって、将来を誓った相手の“ふり”をさせたのだって。
あんなの、俺がそうしたかったからだ。
俺がそんな幸せを一瞬でも味わってみたかったからなんだよ。
そんなものに騙された“ふり”をしてくれるんだもの、小雪は。