夜が明けぬなら、いっそ。
終章
『なぁ、景秀』
『ん…?』
『お前は…生まれ変わりというものは、信じているか』
いつだったか、少女は眠れない気持ちを誤魔化すように隣に眠る青年へ問いかけたことがあった。
『生まれ変わり?』と、優しい優しい男の返事に、少女は体勢をくるっと変えて向き合った。
『あぁ。死んだら…人は生まれ変わると聞いたことがある』
『…小雪ってさ、かわいいところがあるよね』
『…は?』
『純粋ということだ。…おいで』
慣れない猫が少しずつ懐いた頃。
青年は、その猫の扱い方をだんだんと分かってきていた。
『おいで』と言って素直に来るような子ではないから、そう言いながらも自ら腕を伸ばして少し強引にも引き寄せる。
『もしそんなものがあるなら…俺はまた小雪と出会いたいな』
勘弁しろ、なんて返ってくると思っていた。
けれどそう言われなかったことに青年は腕の力をこめる。
と、少女はぽつりと宵闇に放った。
『…そのときは病だって治る、そんな時代がいい』
『あと…君も俺も人を斬らなくて生きられる世がいいね。そこでも俺は世界平和を目指すんだ』
少女は、青年の腕の中で笑った。