夜が明けぬなら、いっそ。




確かに先ほど保健室を出て行った保険医は、もうすぐ保護者が迎えに来るって言っていたっけ…。


ガラガラガラと開いたドアの先。

はあと、ため息を吐きながら入ってくるスーツ姿に黒縁メガネをかけた人。



「は?元気そうだけど。あ、誰か怪我でもさしたとか?」


「ううん。腹いてぇのはマジだよ」


「そんなの放っておけば治るだろ。わざわざ仕事抜け出してくる俺の気持ち考えろって」



分かります、お兄さん。
その気持ちは私がすごく分かるんです。

私だってこうして授業を抜け出してしまった。

また戻ったらクラスメイトにどんな陰口を言われるか分からない。



「へへ、わりーね兄ちゃん」



詫びれてなんかいない弟。

この人と付き合って1ヶ月は経ったけど、お兄さんがいるなんて初めて知った。


それもまだ若くて、女子生徒に人気が出そうで、弟とは違って常識は持っていそうな見た目だ。



「───っと、こいつに何かされた?」


「…え、」



その人は私を見つけるや否や、すぐに心配してくる。



「こいつに殴られたりしてない?同じクラスの子なの?」


「そうそう兄ちゃん!こいつ俺の彼女なんだよ!」



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