夜が明けぬなら、いっそ。
降り続ける雪を見つめていると、ぼうっと考えてしまう。
考えてしまうのに言葉は勝手に飛び出してしまった。
でもなぜか訂正する気も起きなくて、恥ずかしさもなくて、やっぱり不思議な感覚だ。
「……」
ふいに見上げた目がバチッと合った。
その人もまた、私をじっと見つめていて。
「わっ、」
戸惑いなく合わせていると、スッと伸びてきた手が私の頭をポンポンと優しく叩いた。
あなたの弟にすらこんなふうにされたことは無いというのに…。
反応に遅れたとか、びっくりして放心状態とか、そうではなくて。
「……確かに口説いてるかも」
「え…?」
「やめときな、あいつは。君には笑っていて欲しいよ俺」
嫌では無かったのだ。
初対面のはずなのに、こうして触れられることが怖くもなくて。
もっと話していたい、もっと話してみたい、そんなふうに思わせてくるのだから。
「あ、ごめん俺そろそろ行かなきゃ。悪いね、こんな弟に付き合わせちゃって」
「…いえ」
彼にはまた会えるような気がした。
そして、また会いたいとも思った。
保健室から出て小走りに颯爽に駆けてゆく背中は、それもまた。
どこかで見たことがあるような気がした───。