夜が明けぬなら、いっそ。
それは沖田と呼ばれた青年の声か、私の声か、それとも斬られた女の戸惑いの声か。
ブシャ───!!と、それはもう静かに畳は血で染まった。
気づけば泣き喚いていた女は倒れ込むように首の動脈を斬られてうつ伏せ。
それをしてしまったのは、実行したのは、ずっと私の隣にいた男だった。
「……けい…しゅう、」
「終わりました。これで静かにしてくださいね、天子の芹沢さん」
倒れる女へと合掌する男の言葉に、場は静まり返った。
そして女達はこれ以上ない悲鳴を上げては逃げるように襖の先へ。
「ふっ、わっはっはっはっ!!面白い男だ!!名はなんと言う?共に呑もうじゃないか!」
「お断りします。こんなにも不味い酒も中々ありませんよ。…小雪、」
ただ笑っているのは芹沢 鴨、ただ1人。
土方も近藤も沖田も声が出せないでいた。
そして男は私に振り返って眉を下げる。
「この女は俺の標的だった。任務成功だ」
それを言われてしまうと、この京に来たのは私について来る為では無かったんだと。
本当にこの男にはこの男の仕事があったんだと。
「帰ろう、さすがに今日こそ宿はあるだろ?」
「…生憎だが行き当たりばったりだ。空いてなければ野宿」
「ええ、さすがに池で水浴びは死んでしまうよ」
「───待て。」
そんな私達を止めたのは、景秀とは違った種の女みたいな顔をした眉目秀麗な男だった。
土方、だったか。