夜が明けぬなら、いっそ。
「ここは島原だ。騒ぎを起こしたお前らを逃がすわけにゃいかねえな」
「いやいや、騒ぎの発端はあんたらだろう?」
「だとしても花街の芸者を1人殺した罪は内容によっちゃでけえぞ。
総司、斎藤、平助、こいつらを捕縛しろ」
気づけば両腕は縄で拘束。
本当はこんなものだって自力でほどくことが出来るのだけど、「面白そうだから黙っていよう」なんて景秀の笑みがあった。
「壬生浪士組……屯所…」
と、表札の掛かる屋敷に連れられて。
「とりあえず今日はここで寝てろ」
「あんたらを助けてあげたってのに、これじゃあまるで俺達は罪人だね小雪」
「黙れ、言いてえことがあんなら明日聞く」
投げられた身体は薄暗い蔵の中。
分厚い扉を閉めようとする土方へ見せびらかすみたく、景秀は私を引き寄せて頭を撫でてきた。
「この人、鬼みたいに怖いねぇ。よしよし泣くな、兄さんがついてるからね小雪」
「触るな、誰が兄さんだ。それに泣いてなどいない。私はトキだ」
「この子ってばこういう子なんです。強がりで意地っ張りでね、本当は寂しがり屋さんなのに。可哀想でしょう?」
誰がだ、なにがだ。
なんだ突然。
それもこいつの何かの策なのだろう。
ギィィィ、バタンッ。
けれど土方に効果はなく、重い扉は閉じられた。