夜が明けぬなら、いっそ。
孤児全員がそうさせられるわけじゃなく、ちゃんと選別されているとしても。
3つで刀を持って笑うだなんて、そんなはずがない。
『ふっ、やはりまだ完全には暗殺者になっておらぬな。育て甲斐はありそうだ。
よく聞け景秀よ、我々は心を殺すのだ』
『…こころを…、ころす…?』
『そうだ。命を奪うから救われる命だってある』
目の前の幼い女の子は、少年に手を伸ばすようにして笑った。
きゃっきゃと笑って屈託なく見つめてくる。
『トキ…ちゃん、』
気づけば近寄っていた。
そっと手を伸ばしてみると、まだ何も知らない純粋な眼差しは嬉しそうに受け入れてくれる。
『俺は、景秀。…よろしくね』
『けいしゅ?けいしゅ!』
『うん。けいしゅだよ』
十を殺す鬼だなんて似合わない。
この子は消えてしまいそうなくらい白い肌をしていて、透き通る瑞々しさがあって。
例えるなら───…雪。
そう、雪だ。
今も襖の外でしんしんと降り注いでいる粉雪のよう。
『……小雪、』
こっちの方が君には似合ってる、なんて。
小さくつぶやいたその名前は、大人達には聞こえていなかった───。